モーツァルト/交響曲第38番ニ長調「プラハ」について少々
「プラハ」というニックネームのつけられた第38番の交響曲は,モーツァルトの後期の交響曲の中でも独特の個性を放っています。
まず,メヌエット楽章なしの3楽章構成となっています。
それでいて密度の濃い,バランスの良さを感じさせてくれます。
それは曲の要所要所で厳格な対位法の技法を使っていることによります。(モーツァルトはハイドンやバッハの対位法を目の当たりにしてその素晴らしさに感涙し、ものすごく勉強したそうです!)そして モーツァルトの持ち味である明快さ,変わり身の速さにバッハに代表されるような重層的な響きが加わった充実した作品となっています。
この「プラハ」は作曲依頼を受けて作った交響曲の最後の曲です。
厳格さと流麗さが融合し複雑な感情表現を作っているという点では,後期3大交響曲(第39番、第40番、第41番「ジュピター」)に負けず劣らずです。
この曲の「プラハ」というニックネームは初演がプラハだった為に付いたそうです。
同じ1786年に書かれた歌劇「フィガロの結婚」がプラハで大ヒットした(街行く人々が口ずさむほどの人気ぶりだったらしい!)のをきっかけに作曲されたそうです。
その「フィガロ・ブーム」の後,プラハから再度招待を受けてプラハで初演したのがこの曲です。 「プラハ」は,この「フィガロの結婚」や「ピアノ協奏曲第23番」などと同じ1786年に書かれています。
曲の気分も似た雰囲気を持っています。
第1楽章の序奏などでは,その後に書かれる「ドン・ジョヴァンニ」を予感させる雰囲気も持っています。
モーツァルトの絶頂期に書かれた,モーツァルトらしさが満載された傑作の1つです。
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